優しくする方法









































まだまだ、慣れなかった頃
理解できる癖に、気づかないふりをしようとしていた頃の話

食いたい物をそのまま
特に何も気にせず、
視界に入ったところからさっさと
胃に入れて消化する
だから、病院食の不味さも気にならないし
唯一害悪な売店にも興味が湧かなかった

いくら病人だからって、寝転がってんのも暇だな
頭をただ働かせて1日過ごすのも簡単だが
起き上がって、ただ歩いて戻ってくるだけでも
少しはマシなことに頭を使えるだろうか
「どこ行くの?」
「・・・散歩」
「ミサカもついてく」
「そこでじっとしてろ」
「ミサカも行くったら行くのってミサカはミサカはお得意の駄々っ子攻撃」
どこが攻撃だ
「うるせえ、いいからじっとしてろ」
「すぐ帰ってくる?」
「・・・さあな」
そこに期待が少しでもあるのなら、全部捨てて欲しい
どうにもまだ距離を測りかねているのに
病室のドアを閉める
何も聞こえないし、
何も言っていない
ドア越しで、状態だって見えないから
それが全部杞憂だってことの方が確立は高い
それでも何か
ひっかるように腕を引くから
「ちっ」
振り返って、勢い良くドアを開ければ
そこには想像よりも暗く、小さく、脆い何かが居た
「っ・・、びっ、くりした」
「・・・」
「どうしたの」
「・・」
それはお前の方だろ
何で俯いてた?
何で涙を溜めてた?
何でそんなに落胆した?
まるで俺に
「どうしたの?忘れ物?」
「・・そう、だな」
多分色んな所に、色んなものを
「・・・?」
「売店に行く」
「・・ミサカも、行きたい」
服の裾を掴んで、まっすぐ見つめてくる
そうやって、触れるのも、
見るのも、会話するのも
受け入れるだけの何かが足りない

「何も、買ってやらねえぞ」
「うん、問題ないかも」
表情が和らぐと安心して
冷たくて当たり前だった何かが溶けていく感じが
また、たまらなくなる

「そうかよ」
「うん」

それでもどうにか、
上手くやりたいと考えてしまうのが苦しくて、辛くて
また、たまらなくなる