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言い訳で構わないが
別に返す気が無いわけじゃない
一億分の一でも
返す気が無いわけじゃない
一生かかって返せる額じゃなくても
返す気が無いわけじゃないんだ
ただ、ほんの少し返せても
すぐに比率は戻って、増して
次は十億になる
また、ほんの少しこらえて、耐えて、我慢しても
次は百億になる
傷だらけのボロボロになって、百を返したら、
その代償は億を超えた
積み重なる負債の山
大変だとか、苦しいとかはどうでもいい
血が流れて、動けなくなっても構わない
ただ、できるなら、一生で返したい
俺の命で返したい
ただ、それだけだ
別に、無かったことにしたいわけじゃない
それは、決して忘れたりしない、
忘れることはない
ただ、それだけ
なのに、最近
そうだった筈なのに
最近
なぜか、
何かが
別の感情が唸る

時折見せるその顔を作ってるのは
俺の所為じゃないかって
そんな勝手なことを考えるようになった


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「食べたいっ食べたいーってミサカはミサカは両手を挙げて駄々をこねてみる」
「うるせえぞ、クソガキっ」

その小さな我侭は
負債の山を見かねたガキなりの気遣いなのか
それとも、やっぱりただガキなのか
もし、


ただ、お前がもし、
触れたいと思った時に
俺に触れたときに、
怪我だけはしないように、
棘くらいは抜いておくから
ほんの少しずつ返す合間に
お前が欲しいものがあるなら
勝手に奪っていけばいい
薄っぺらい肌にも最低限の体温はあるから
切れば血位は流せるから
爪を立てれば、傷くらい付けられるから

「むーってミサカはミサカはあからさまにブーたれてみる」
「・・・」

打ち止めは自分で落としたアイスをただ見つめる
その目は段々涙が滲み出す

「・・・ぅ」
「くそっ」
「ぁ・・」
「おいっさっきの同じやつよこせっ」
ワゴンの店員に打ち止めが落としたのと同じものを買う

「ほらよ、次はねえぞ
「うん、ありがとうっ」
「わかったから、落ち着いて食え」
「ん〜美味しいってミサカはミサカは大満足」
「そらよかったな」

たまに、ほんとうに稀に
怖くなる時がある
俺の糞みたいな一生で
返せる日が来るんだろうか、と
この手で触れれば
また、増えるんじゃないかって
俺がそばにいることが
負債の山を作る原因になっているんじゃないかって

「美味しかったぁ」
「・・・・」

悲しいとか、寂しいとかって類のそれに、
触れられない理由がある

まだ、どうしても
言えないことがある
告げられないことがある
触れられない感情がある
まだ、清算できていないから
返しきれていないから
その先の感情には
まだ、
もしかしたら、この先も
手を出せないのかもしれない
この負債に霞んでいるから

この
伸ばしかけた手も
結局触れられずに
元の場所に落ち着く

くそがきは、何か言いたげに口を開いたが、
声にはならなかった
もしかしたら

霞んだ感情が
その寂しそうな顔を作っていたとしても
触れたいと思っても
まだ、
どうしても手が出せそうに無い
どうしても
どう、しても
そんな資格がまだない
自分を許せる程なにも返せていない

もしかしたら、待たせているんだろうか
とか、
勝手なことを考えてしまうほど
腑抜けていく

何で言葉に、電気信号にすらしてないことに
こうやって、
勝手なことを考えるんだろうか

声をかけそうで、
手を伸ばしそうで、伸ばせない
ここから先は、お前が選ぶところ
まだ、俺が選ぶところじゃない

そうやって、勝手に思考をめぐらせている内に
俺より随分小さな手は、
簡単に手を取り
簡単に引っぱっていく

「一方通行っ、次はあっちってミサカはミサカは逸れない様にあなたの手を引く」
「てめぇ」

分かってるかもしれない、
分からないフリをしてるのかもしれない
ずるいのかもしれない

それでも
その声を聞くと
その温度に触れると
安心するのは事実

まだ、どうしても触れられないものがある
だけど、もし
この負債が片付いたら
俺が許せたら
許されたら

繰り返し祈る
もし、と