それはとても簡単なこと








































「嫌だよ」
何も無い真っ白な世界が止まって
その声だけが響いた


「ずっと一緒にいたいよ、ってミサカはミサカはお願いしてみる」

手を離しかけたのに
伸ばしていた手を
離しそうになったのに
それでも
そんなこと
こいつには関係ない
俺が勝手に心配してても
こいつは
このがきは俺を選ぶ
どんなときでも
俺を信じて
俺を選んだ
俺なんかがとか
勝手に引け目を感じて
勝手に違うって決め付けて
突き放しておきながら、触れられると安心して
そんな矛盾した感情に嫌気が差していたのに
それでも
いつも
俺を選ぶ

もうきっと
泣いてしまうだろうガキを見ていた

ばかだな
本当に
勝手に不安になって
壊れそうになったのに

俺を選んで
俺がいいって言う

そう言ってくれるやつが
ここにいるんだ

聞かなくたって、
言えなくたって
いつだって先に言葉にしてくれる

簡単に単純に
とてもシンプルに

「そォだな」



黒翼が羽を散らし瞬間
とうとう涙を零しだした

いつもの元気さがなくても
うまく会話が出来なくても
そんな状態でも一緒に居れたのが
居れた時間が

けど
やっぱり、こうやって
声が聞けて
ちょろちょろ動き回ってるほうが
例えそばに入れなくても
元気で居てくれるほうが
ずっといい

だから
行ってくるよ

「俺も、ずっと一緒にいたかった」

単純で
シンプルで
簡単なこと


翼の色が白く変わる
光に反射して
辺りが急に眩しくなる
手が離れた

こんな俺がいいという
お前のそばに居れたことが
嬉しかった

それを言葉に出来たことも

いつの間にか居心地良くなって、
触れても痛くなくなってたことも
全部
嬉しかった

俺よりも
俺を信じてくれたことが

だから、俺も信じよう
戻ってこれなくても
いつか離れてしまっても
俺を信じるお前を
俺は、信じる