多分一番欲しい物






































学園都市最強の彼は知らない
ここでは誰よりも安眠を許されていること
どんな些細な音もない時間があること
その時だけは守られていること
それは数日に一度訪れること


テーブルに片肘ついている背中、が
うとうと揺れているのを見つけた
好奇心を奥に抑えて
あくまで静かに
静かに近づくと
突然後ろ手をつかまれる
「え」
小さな手が
人差し指を立てて口元にあてる
ああ、つまんないの
さらに後ろには黄泉川と芳川が
手が引き台所近くまで連れて行かれた
「静かにしてねってミサカはミサカはお願いしてみる」
「めんどくさーっていうかもうわかったから離してよ」
手が離れる

「せっかく眠ってるからってミサカはミサカは更に理由を述べてみる」
聞いてないし
3人とも当たり前みたいに口をつむって
生活音しかならない空間が酷く居心地悪い
「どこ行くの?ってミサカはミサカは聞いてみる」
「外」
「お買い物?」
「・・・別に、大人の遊びってやつよ」
とにかく外に出たいのに
また手を引くから
小さな手が掴むから
ミサカはこの手の払い方を知らない
「むー、またこのミサカを仲間はずれにする気ねってミサカはミサカは指摘してみる」
「手を」
「逃がさないーってミサカはミサカはしがみ付いてみる」
「ちょ、っと」
左足に抱きつくからだが温かくて
心臓がドキドキするのが気持ち悪くて
「お昼寝する?ってミサカはミサカは聞いてみる」
「や、だ」
平和とか安寧とか落着とか
そういう何かが嫌だ
染み込んでくるのが気持ち悪い
「んー、一方通行ならお昼寝がとっても効果的なのにってミサカはミサカは考えてみる」
「・・ね、はなし、て」
呼吸もおかしくなってるんじゃないかって
「おおーひらめいたーってミサカはミサカはあくまで小声で言ってみる」
「・・・」
「一方通行の所行こうってミサカはミサカは提案してみる」
「意味、わかんない」
だってさっき静かにしろって言った
「あのね、しーっだよってミサカはミサカは再度喚起する」
「・・・」

言われるがままに近づく
さっきよりもっと近く
手を伸ばせばすぐ触れられる程度の距離で
最終信号はおいでと手を招き、指をさす
ゆっくりと覗き込むと
普段とは考えられないくらい緩く眠る顔に
息をのんだ
てっきり眉間に皺でも寄せて年寄り臭く寝てると思ったから
そして、それを嬉しそうに眺める少女の顔は
誰かの表情によく似ていて

ゆっくりと手を引かれまた距離をおく
ミサカはの脳波はリンクしてないから
特別で異質だから
誰も知らないでしょ
人一倍焦がれてることも
きっと
気づかないでしょ

「温かいねってミサカはミサカは同意を求めてみる」
外は暑くて
部屋の中は涼しくて
そんな形容はどこにも当てはまらないけど
「・・うん」
繋ぐ手を握り返して思う
あの人が惹かれる理由
慣れると言った意味