何になろうか





































「これは運んで良い?てミサカはミサカは聞いてみる」
「そうそう、あとこれも頼むじゃんよ」
「うん」
傍から見れば親子にだって見えそうな二人を
視界のぎりぎりに収める少年

「考え事?」
「何が」
「別に深い意味は無いわ、答える必要もね」
「・・・」
「心配いらないんじゃない?」
「何が」
「あの子との距離測りかねてるみたいだけど」
「何なンだよ、てめェも説教かァ」
「なあに?愛穂も?歳はとりたくないわね」
「・・・」
「・・・・・いつも何か言いたそうな顔してるわね」
「別に」
「いいじゃない。触れたいと思えば触れればいいのに」
「なんだよ」
「案外簡単なことよ。こらえる必要は無いし、ムリをする必要もない」

「ンな、勝手なこと」

「勝手じゃないでしょ?身勝手じゃないでしょ。だって、あの子は最初から許しているでしょ。
触れることを。そして君は・・・許されるべきでしょ」

「更正でもさせたいのか?」

「あら、必要なさそうだけど?・・でも、そうね。
君の意思で、行動することに、私には口うるさく心配する権利はあっても、邪魔をする権利は無いのよね。
全て君自身が決めることだもの。」
「・・・」
「でも、あの子はきっと、いつまでも待っているでしょうね。
あとは、君がどうするか。自分自身をどう思って、あの子をどう思って、
そして、どう行動するか、よ」


「・・・教師だの親だのってのは、そォいうことを言うもンなのか?」
「あら、もし君がそう感じたのなら、それはとても光栄だわ」
そう言うと、あからさまな苦い顔と、溜息

「あなたも手伝ってーってミサカはミサアはお願いしてみるー」
「ほら、お呼びよ」
「ったく、うるせえガキだなァ」
頭に手を当て、さも面倒だと言わんばかりに
だらだらと、
でも確実に打ち止めの元へ歩いていく
それをなんだか、ぼんやりと見届けていると、
珍しいものでも見るように顔を覗き込まれた
「夕飯準備できたけど、どうしたじゃん?」
「ん?」
「随分機嫌良さそうみえるじゃんよ」
「そう?嬉しい事言われたのよ」
「へ〜」
「ほんとに、光栄だわ」
「よかったじゃん」


「ああ゛?・・おい黄泉川ァ!!」
「どうしたじゃん?」
「クソガキが飲み物零しやがったンだよ、雑巾とかねェのか?」
「うぅ、ごめんなさいってミサカはミサカは素直に謝ってみる」
「あらあら」
「わかったじゃんよ」

そんな愛穂を見送る
優しくゆっくり過ぎていく
束の間のひと時
なんだか遠い世界を見ているような

「吉川も早くーってミサカはミサカは呼んでみる」
「オイ、ジタバタすンじゃねェ」
「ほらほら、落ち着くじゃんよ」
「ふふふ、はいはい。すぐ行くわ」

好き嫌いがどうだとか、食べながら喋るなとか、
今日何があったとか
そんな他愛無い話

「困ったわね」
「ん?何がじゃんよ」
「楽しいの」
「右に同じ」

即答されて、苦笑した
本当に、困ったわ