君へ

























泣き声が聞こえる
しくしくと小さく声を漏らして
誰か助けてって音がするのに
きっと誰も来ない

「また泣いてんのかよ」
「ジュダルちゃ、」
窓から覗き込むと、
ベッドの上で、膝を抱えていた
両手で顔を覆い、
隙間から見える両目が赤く充血している
「すぐ泣く」
「だってぇ」
溜息をついて部屋に入ると
紅玉は体を強張らせる
「泣いたって誰も来ないだろ」
「・・・」
そのままベッドに腰掛けると
びくつくから気分悪い
「それ、どうしたの?」
「油桃、厨房で拾った」
「いいの?」
「知らね」
言葉の途中にまだ涙を流す
「ジュダルちゃん」
「食べるか?」
「でもぉ、」
「誰も居なかったからバレねえよ」
「・・・ほんとに?」
「ホント」
一口、一口と少しずつ食べて
でも、まだ泣く
いつものことだ
あれが怖い、それが怖い
冷たい、寂しい
居場所が無いって

頬をひっぱる
「いたいよぉ」
「・・・」
まだ泣く
どうしようか
仕方ない
ベッドから離れて、ドアを開ける
すると後ろから声がする
「・・どこ行くの?」
「泣く奴とは遊ばねえ」
「ジュダルちゃん、待って」
「泣き止めよ」
「だって、でも」
「じゃあ、俺一人で行く」
「え、」
「じゃあなっ」
そう言って少し早めに歩く
「待ってー」
「やーだ」
「ジュダルちゃん、待ってぇ」
「しらねー」
追いかけてくるから
掴まらないように走る
「待ってよー」
「おっせーよ、ホントにおいてくぞ」
「お願い、待って」
「・・・」
「待ってっ」
腕をつかまれる
やっと泣き止んだな
「花畑」
「え」
「見つけたから連れてってやる」
「・・・・」
「来るか?」
「・・うんっ」
涙の痕と
擦って赤くなった顔とで
ぐしゃぐしゃになったまま笑う
「ぶっさいくだな」
「うっ、だって」
また両手を顔に近づけようとするから
「行くぞ」
「わ」
その手をとって、また走る
「ジュダルちゃん」
「・・・・」
角を曲がると夏黄文とすれ違った
「姫!?どちらへ?」
「散歩っ」
「ジュダルちゃんっ、・・すぐ戻るから」
後ろで何度も呼ぶ声がする
「うるせえな」
「ふふ」
「どうした?」
「夏黄文ったら変な顔して」
「ふーん」
ふやけたみたいに、頬を緩ませる
ずっと、そうやって笑ってればいいのに
繋ぐ手に力を込める
「ジュダルちゃん?」
「別に」
そしたらすぐ遊んでやるのに