ツキアカリ

「黒、どうしたの?」 愛しい声はこんなに近いのに、 瞼は重く その距離は測れず 指一本も体は動かない 「黒、眠たいの?」 眠いのだろうか 考えることも 理解することも 声も なにもできない 「黒?」 声が澄む 「・・・・黒?」 その声を 呼ぶ声をずっと 聴いていたかった 風の音にさえ消されそうな、 やっと空気が振動するような音を ずっと 「黒・・・」 ずっと 「・・・黒、おやすみ」 ツキアカリから視界を優しく手で覆う その声を ずっと 聴いていたかった 「黒、私を殺して」 そう伸ばす手をゆっくり掴みに行く 踏みしめながら、思い出しながら あの時できなかったことを 誰よりも自分をとったことを 微笑まなくてもわかっていた 非は全て自分にある 君の望みを叶えよう 俺の望みじゃなくて、 君の望みを叶えよう もう随分と時間を費やした もう無い位君を思い出した 君の望みを叶えよう 「・・黒」 「嗚呼」 ただ君に、救いを 「おやすみ、銀」

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