「嘘でしょ？」
「本当だ」
「嘘だっ」
「本当だっ」
「嘘だぁーー！」




通信から聴こえる息子の泣き声
必死に平静を装う夫。



こんなのあんまりだ。






部屋の扉が開いた。


バシンっ！！
「!････レイ」
「･････」

私は、チャールズを確認してすぐに、
右手で引っぱたいた。
目は、きっと思い切り睨み付けているだろ。

チャールズが悪いわけじゃない。
「レイ」
「っ･･なんで、」
それでも、辛くて、悲しくて耐えられなかった。
涙がぼろぼろ落ちるのがわかる。

「うっ、なんでよ、なんであんな事言ったのよ、」
「････」
「レントンを息子として、迎えようって言ったのに･･」
「レイ」
「なんでっ、」
「･･」
「あなただってわかるでしょう？あの子きっと、出て行くわ」
「ああ」
「戻ってこないかもしれないのよ！？」
「ああ」
「ヤダァッ！、いやよチャールズ。レントンは私達の息子なのっ」
まるで、駄々をこねる子供のように
私は、チャールズの胸を叩き続けた。
「うっあぁ･･･」
もう、言葉すら出なかった。
言いたいことは、沢山あるけど、
言えることは、何一つなかった。
チャールズは黙って抱きしめてくれた。
どうしようもない事だってあるんだと。
もう、私たちは子供じゃないから。







「レイ、あいつは俺たちの息子だ。」
「･･」
「それは、ずっとこの先変わらない」
「っ当たり前よ」
「見送ってやろうじゃないか」
私は、涙をぬぐった。
「っ、そうね。私達の息子だものね」
「ああ」
笑って、見送ることはできないだろうけど。









そして、一時間もたたないうちに
レントンはパラシュートをつけて私達の目の前に現れた。
ああ、もう本当に出て行くんだと、
余計胸に痛かった。
「あの、一つだけ、いいですか？」
「ああ」
「僕のこと、知ってて声をかけたんですか？」
「当たり前じゃないっ」
そんなの、当然だ、
それでも、息子に迎えようと決めたのだから。
「そうですか。･･･それじゃあ、僕行きます。」
「ああ、」
今引き止めれば、間に合うかもしれない
待って、と頼めば考え直してくれるかもしれない。

「レイさん、チャールズさん、ありがとうございました。」
一礼して、レントンはここから居なくなってしまった。
溢れる涙が止まらなかった。
悲しくて、潰れてしまいそうな私を、
チャールズはずっと抱きしめてくれた。







そして、3つ目のマグカップが使われることはなかった。