愛しい人

「ほんとそっくりよ、レントンに」   「・・そうですか?」 「同じよ、きっと必死なのね」 タルホと言う人はそう言い遠くを見つめた 私もその方向を見つめた 少し間があった 船の説明を少し受け 艦長のタルホさんに呼ばれ、ここに来てから多分30分はたっただろう、 大して会話もしていない   「ねえさっき愛しい人がいるっていったわよね」 いきなり声を掛けられた 「・はいっ」 「ジエンドのパイロットなのよね?」 「はい。アネモネです」 「辛かった?」 「いいえ、僕なんかより彼女の方が辛かった筈です。」 「そう。・・・アネモネっていう花があるの知ってる?」 『私への当て付けね』 「っ・・・消える希望」 「知ってたのね」 そう言うと、また視線を戻した。 「アネモネに聴きました」 「そう」   「どんな子?って聞いてもいいかしら?」 こちらに視線を戻した 『死になさいよ!』 「・・・はい、ピンクの髪が腰まであって、いつもワンピースを着ています」 「うん」 「お菓子が好きで、お菓子を食べるている時はとても楽しそうです」 「うん」 「いつもベッドに座って、時間になると薬を・・」 「うん」 「・・僕が射つんですっ」 「うん」 「自分が何をしているのか、いや、したのかはわかっています ・・・それに、最初は同情だったんです」 アネモネの話をするはずかどんどん自分の話になっていた 「うん」 それでも、この人はちゃんと話を聞いてくれた 「自分も戦争で家族を失いました・ ・・それでも、それなのに自分は何もわかってなかったんです。 アネモネのことも、あの笑顔も、言葉も。今更なのにっ」 『あんたに何がわかるのよ?』 何も 『あなたは何も知らない』 何もわかっていなかった 「うん」 「・・・」 「それでも、好きなんでしょ?」 そう言った目はとても優しかった 「はい」 「焦って空回りすることも、傷つけてしまうことも、わかってるのなら。 それは同情じゃないわ。対等な立場で同じ目線で未来を見ようとしてるから。 噛み合わないこともある、人と人だから。」 「はい」 「まあ、仕方ないかな、人って迷惑かけないと生きていけないのよ」 はにかむように、嘆くように笑った 「それでも、自分がしてきた事は・」 私はうつ向いた 「うん」 「それでも僕はっ」 「うん」 『あなたが私を助けてくれるの?』 「あ、」 「大丈夫なんて無責任なこと言えないけど、頑張って。応援するわ」 顔をあげた時、そこには絶対の温もりがあった 「はい、ありがとうございます」 それから、沢山の話をした気がする 何度も蹴られ痣が消えない話をした時が一番もりあがった;; だが それもきっと、証になるはずよ。いい意味でも悪い意味でもね   全てを捧げてもきっと、許される事はない それでも、もし側に居ることを望んでくれるのなら それだけで自分は生きていけると思う 同情ではなく 必然の  愛しい人