trick or treat

警報が鳴った。
「ばっかじゃないの?」
「アネモネ、行こう」
「ククッ」
許される場所。
何をしても、何を言っても、
許される場所。
ここはそういうところだ。
権力が物を言い
年の差までも踏み越える。

「それと、あなたの部屋は明け渡してもらいますから。」
「何だと!?」
「当然でしょう?アネモネの部屋にするんです。」
アネモネはにっこり笑った。

「さ、アネモネここだよ。」
「うん」
「出撃までここにいていいからね。」
「どうしても、出撃しなきゃいけないの?」
「そう言わないでよ。」
「ドミニク」
アネモネの腕が首に回ってきた
「うん?」
「やだな〜」
アネモネの頭を撫でた
「ごめんね」
「・・やだ」
「うん」
「・・・」
「・・あ、お菓子もって来たよ。食べる?」
「あるの?食べる!」
「かばんの隣の袋にいれてるから、好きなだけ食べていいよ?」
「ほんとに?嬉しいv」
「よかった。それじゃ、ブリッジにいるからね。」
「うんv」

お菓子に飛びつく背中に、
出撃しなくていいよ。と言えたら。
もう、何もしなくていいよ、と言えたら。
でも、いえないから。

せめて、戦う時までは、出撃するまでは
どんな我侭でも、許そうと決めた。
初めて会ったあの時に。
初めて、the-endに乗ったあの時に。
初めて、アネモネの涙を見たときに。




「どうしたの?まだ、居て良かったのに」
「だって、あの部屋くさいんだもん、オヤジくさくて頭痛くなっちゃう」
「ごめんね。」
後ろで管制が何が告げているが、対したことはない。
隅で蹲っているアネモネの所に歩いた。
「お菓子は?」
「もう、全部食べちゃった。」
「そう、今度はもっとたくさん買ってくるね。」
「うん」
「まだ、出撃まで少しあるよ?」
「ドミニク」
袖を引っ張られた。
アネモネは変わらず、座ったまま。
「ん?」
あんまり引っ張るから、ひざをついた。
「ドミニク」
アネモネが少し顔を近づけてきた
それは、合図。
そして、お許し。
「アネモネ」
「・・んっ」
周りに視線を感じたが、それはすぐにはずされた。
そんなこと、気にはならなかった。
「ここにいる。」
「うん」
左手で、アネモネの髪をとく


ずっと、何もなければいいのに。
こうしていられればいいのに。

でも、違う。
「ドミニク・・」
「ん?」
「やっぱり出撃するの?」
「うん。ごめんね。」
「うん」

こんな、行為も言葉もただ、あやす為だけで
アネモネは自分を好きで、やってるんじゃない事もわかっている。
だから、ほんとは、もっと違う世界を望みたい。
そう思うだけ。

何をしても、好きだという言葉は出ないから。


「アネモネ」
「なに?」
「気をつけてね。」
「・・うん」



思うだけ。