日が沈んで今日が終わる。
楽しいことも悲しいことも受けとめて、
私は今日を終える。


空が裂けて、世界が終わって。
今新しい世界を私は生きている。



私はちゃんと生きている。
















morning-night

「まだ、向こうに居るのね。」 もう癖になった。 眠る前に見上げる空。 エウレカ達が帰ってこないから。 小さな窓から見上げる月は大きくて、綺麗で 「あっちは楽しいのかな」 「どうだろうね」 温かいココアをもらって、また、月を見上げた。 夜の空気はちょっと冷たい、 でも、ココアの甘い香りと温度が手に丁度いい 「早く帰ってくればいいのに、」 ココアを一口飲んだ、思ったとおり甘くておいしい。 「そうだね。皆待ってるからね」 「そうよ」 どうせ帰ってくるなら、起きてる間に帰ってきて欲しいから だから、眠りにつくまでの時間は、月を見てる そうやって、気がつくと、ココアはなくなっていた。 「アネモネ、もう眠ろうか」 私はうなづいて、小さな窓を閉めた。 ベットに座って、ドミニクに髪をといてもらう。 あたしは、この時間がすごく好き。 長い髪を少しずつ、丁寧に梳いてくれる。 タオルは、花のいい匂いがする。 この町は、春に沢山の花が咲いて、 お祭りをするんだって、おばさんが言ってた。 だから、この町は華の町って呼ばれるんだって。 バイクで世界を見ていくのも、だいぶ慣れたと思う。 最初は、テントを張ってたんだけど、 宿を借りた方が辛くないからって、 あたしは平気なのに、 アネモネは女の子だから、風引くといけないからって。 ドミニクが言う。 嬉しいけど、そんな過保護にしなくてもいいのに。 「アネモネの髪にも町の花の香りがついたみたいだね。」 「ほんと?だったら嬉しいわ。この町の香りってすごく素敵だもの」 「いい香りがするよ」 「ありがとうv」 嬉しい気持ちも、悲しい気持ちも受け止めて、 素直に気持ちを伝えられるように。 毎日そう思う。 「あたしは、こんなに綺麗な世界を壊そうとしてたのね。」 そう言って、ドミニクを見た 悲しい顔をすると思ったのに、ドミニクは優しい顔をしていた。 「アネモネ」 ドミニクは私の髪を手で梳きながら言った。 「それは、僕も同じだ」 「ドミニク?」 「僕は、アネモネに薬を与え続けて、そうやって人を殺していた」 「でも、それはドミニクのせいじゃないでしょう?」 「僕のせいだよ。アネモネのせいにして、僕は人を殺してた」 「そうするしかなかったから?」 「違う。そう思ってたけど、動こうとしなかった。 知ろうとしなかったんだ僕は。」 「でも、ドミニクは私を救ってくれたわ」 吃驚したような顔をして、ドミニクは照れたように目をそらした。 「私はドミニクに救われたわ」 「ありがとう」 「世界は綺麗なのに、酷く汚れて見えるときもあるけど、 それはきっと、私が綺麗な所を見ようとしなかったから。」 「うん」 「ちゃんとわかってなかったから。」 「うん」 「少しずつでも、わかっていきたい」 「うん、大丈夫だよ」 「二人で」 「うん、頑張ろう」 「ドミニク大好き」 「うん、僕もだよ」 顔を真っ赤にしてでも、ちゃんと目を見て伝えてくれる。 それがすごく嬉しい。 「おやすみ、ドミニク」 「おやすみ、アネモネ」 私の手は真っ赤な血で染まってるけど、 髪はこの町の花の香りがして、 笑顔の練習もして。 変わっていく。 真っ赤な手が変わらなくても、私は変わっていく。 世界もきっと変わっていく。 それでも構わないって、そう思う。 眩しい光。 「おはよう、アネモネ」 「おはよう、ドミニク」 私が変わっていく。