お帰り3

「おい、タルホ見たか今の」 「いいことじゃない」 いつも何とはなしに見ているニュースが、今日はいつもと違うことを言い出した。 絶望病の完治。 「何でこんな急に」 「さあ?でも、これで沢山の人が救われたわ」 「そうだな」 ここはサーストン家の新居。 場所は変わらず、内装もなるべく前と変わらないものに、 という依頼で造られたらしい。 何ともあの爺さんらしい。 「じっちゃん!!」 思い切りドアが開いた。 「どうしたんだ?爺さんなら・・」 「久しぶりホランド、タルホ」 「エウレカっ!?」 「あっオイ、タルホ!!」 気絶しそうになったタルホ抱きとめた。 「ごめん」 「大丈夫よ、吃驚した。もう、お帰りエウレカ」 「ただいま」 「・・っ」 俺は手で顔を隠した 「ホランドどうしたの?」 「何でもねぇっ」 「泣いてるの!?」 「うるせぇ」 タルホの笑い声と、間もなくエウレカとレントンの笑い声に たいそう幸せを感じたことは、口に出さなかった。 歌が聞こえる。 聞き覚えのある歌。 子守唄とは違う、目を覚ます為の歌にも聞こえる。 「・・・ぁ、ここは」 「ドミニク?」 声のするほうにゆっくり視線を向けた。 「・・アネモネ?」 「うっく、ずっと待ってたんだからね」 「アネモネ」 「バカっ死んじゃったかと思ったじゃないっ」 「アネモネ」 「心配したんだからねっ」 「ごめん」 「・・いいわ、特別に、許してあげる。救ってくれてありがとう」 「救えたのかな?」 「救おうとしてくれた、会いに来てくれた、生きててくれた」 「アネモネ、きれいなったね」 「何よっ」 アネモネは少し頬を染めて、でも涙はぽろぽろと落ちていく。 「好きだよ」 「うんっ」 アネモネが抱きしめてくれた。 腕すら上げられない自分が、とても悔しかった。 「ずっと、一緒に居よう」 「うんっ」 アネモネが口付けてくれた。 「ドミニク、大好きっ」 「ありがとう」 自分でも頬が少し温かくなるのを感じた。 「ほんと綺麗な花」 コップに挿した一輪の花はなく、 かわりに窓から見える沢山の花へ向けて。 その言葉は告げられた。 「アネモネ」 素敵な名前、呼んでくれる人。 「アネモネ」 たった一言でいい、私に言わせて欲しい。 「お帰り、ドミニク」 「ただいま、アネモネ」 そう、お帰りと。