お帰り

虹に向けて手を伸ばした。 もしかしたらとか、そういうんじゃなくて ただ、伸ばした。 そこにいる気がしたから。 「お帰り、エウレカ」 「ただいま。レントン」 2年ぶりの筈なのに、何も変わってない気がするのは ただの気のせいなのかな? 「エウレカ、ずっと待ってたよ」 「うん、待っててくれて、ありがとうレントン」 やっぱり変わってない、その笑顔も声も、 抱きしめた時の感触も、 「レントンっ」 エウレカが首に腕を回してきた、 俺はエウレカにキスをした。 「エウレカ、ずっと一緒に居よう」 「うん」 聞きたいことは山ほどあったけど、 言いたいことの方がもっと多い気がした。 でも、しゃべりだしたのは、エウレカだった。 「レントン、こっちに来て」 「え?」 いきなりどこへ行く気だろう? 皆の所かな、 「私ずっと見てたよ。 レントンもモーリス達も、ゲッコーステイトの皆も、 そして、アネモネも。」 「うん」 「モーリスは立派なお兄ちゃんになって、メーテルもリンクも、 タルホはお母さんになるんだね」 「うん」 「それでね、ずっと見てたの、アネモネがね、笑ってるのに凄く悲しそうに見えて」 「・・うん」 アネモネは、まだ車椅子をはずせないけど、 最近よく笑うようになったってミーシャが言ってた。 悲しくて仕方がないはずなのにって。 「あの時、一生懸命止めたんだけど、皆に声が届かなくて」 「うん」 多分、俺とドミニクが行った時。 「だから、皆に言ったの。独りでいいの?って」 「うん」 「本当に独りになりたいの?って、そんな筈無いから。」 「うん」 「独りは寂しいよ。」 「うん、寂しい。」 この2年ただ、寂しかった。 「そしたらね、皆も寂しいって言って、泣き出したの」 「うん」 「だから、独りがいやなら、守ろうって。皆を守ろうって。 コーラリアンだけじゃなくて、人間も地球も全部を守ろうって。」 「うん」 「皆も手伝ってくれて。だから、私もそれまで残ることにしたの。それでね」 「うん」 ここから、何か大事なことを言うらしい。 エウレカは、胸に手を当て、ゆっくりと口を開いた。 「助かった人も助からなかった人も居るの。 私と一緒に皆と居て、だから、連れてきたの」 「・・うん」 「ここ」 そういって、立ち止まったここは、俺の故郷のはずなのに、見たことのない洞窟だった。 「ここは」 周りは大きな木に囲まれて、風が洞窟から吹いてくる。 ここまでどうやって来たのかわからない。 「ここにいるの」 「ここに?」 「うん、ここは皆とこの世界を繋ぐ所」 「中に入っていいの?」 「うん、行こうレントン」 「うん」 手を繋いだ。 洞窟を歩きながら、何故かサクヤさんにあったときのことを思い出していた。