CB
















咲かせては、散っていく。
また次の年に、咲かせては、また散っていく。
そうやって、回ってるんだ。



空から降ってくるのは、雨と雪だと思っていた。

ひらひらと、風に揺られて、たくさん舞ってくるそれを、
歩きながら、ただ眺めていた。





「あれ?」
「ん?」
バイクから妙な音がした、
何か、空気の抜けたような、
かと思うと、一瞬にして失速し。
とうとう止まってしまった。
「どうしたの?」
「ちょっと見てみるね」
「うん」

旅を続けて、バイクが止まったのは初めて。
「あっ!」
「ドミニク?」
どこか故障してるみたいで、ドミニクは渋い顔をしてる。
「う〜ん。修理してみるから、アネモネちょっと待っててくれるかい?」
「大丈夫?」
「わからない」
「何よそれ、」
仕方ないから、あたしは、ガリバーと一緒に近くに腰を下ろした。
今日は、天気がよく。
ここの、気候はとっても心地よい
温かくて、ポカポカする。
この辺は、人があまり通らないみたいだから、
道路の端にバイクを押して、ドミニクが工具を出して、修理し始めた。




最初は、その姿を後ろから眺めて、
「ドミニク大丈夫?」
「うん、もうちょっと・・」
「わかったわ。」
それから、ガリバーと少し遊んで、
「ドミニクまだ?」
「うん、ごめん。」
「・・わかったわ」
近くに木に寄りかかり、気付いたら眠ってしまっていた。
お昼を食べてすぐだったし、ポカポカした空気のせいで、
すっかり眠り込んでいた。

ガリバーが起こしてくれた時には、
日が落ち始めていて、ポカポカだった空気は、少し肌寒くなっていた。
「ドミニク、まだ終わらないの?」
「うん;;」
「修理してもらった方が良いんじゃないの?」
アクセルさんから貰ったという、工具をだして、
ドミニクの手は真っ黒だった。
「ごめん」
見てわかるように、しょんぼりしている。
「全くもう、何してるのよ」
「ごめん」
「ほら、行くわよ」
「うん」


修理屋は意外と遠くなかった。
もしかしたら、野宿をしないといけないかと思っていたけど、
修理屋の奥さんが、女の子が夜道に出ちゃダメ。といって泊めてくれた。
幾つか部品が必要だからと、バイクは明日修理することになった。


真っ黒なドミニクを先にシャワーに入れて、
上がってから、シャワーを借りて、泊めてもらう部屋に入ると、
窓から、夜の外を見ながら、ドミニクはうな垂れていた。
ガリバーがドミニクのズボンを、グイグイと引っ張っているけど、
全然気付いていないようだった。


「ドミニク?」
「アネモネ、」
声をかけられやっと気付いたのか、
少し驚いて、ドミニクはガリバーを撫でた。
「髪が濡れてるよ」
そういって、ドミニクが髪を乾かしてくれた。
もう、自分で出来るのに。
そうやって、ドミニクはすぐ甘やかす。
「何見てたの?」
「ん?」
「さっき、窓で。」
優しく髪を梳きながら答える。
「桜がね、」
「さくら?」
「近くで沢山咲いてるって、さっき聞いたんだ。」
「見えるの?」
「いや、夜は見えないんだけど、歩いていける距離なんだって」
「うん」
「えと、その、よかったら。明日見に行かない?」
「うんvさくらってどんな花?」
「アネモネと同じ髪の色でキレイだよ」
あたしの事じゃないのに、ちょっと気恥ずかしくなって、
「うんv見てみたい。」
急いで返事を返した。
「よかった。」
そう言ったドミニクの顔は、照れて少し頬が赤かったけど、
凄く優しく笑っていた。











たくさんの木があって、その花は風に揺られるたび、
花を舞わせる。





「これが桜。」
「うん」
「きれいね。」
「うん、アネモネと同じ色だよ」

風に揺られて、流れる髪と、舞うそれは同じ色だった。
だから、風が少し強くても、今日は髪を結ばないほうがいい。
一緒に舞えばキレイだと思ったから。


また、見に来たい。
まだ、目の前にたくさん咲いている桜を見て、そう思った。
また、ドミニクと一緒に見に来たい。
手を繋いで歩いた桜並木。


「ドミニク」
「ん?」
「ありがとうv」
最初は、不思議そうにしていたけど
でも、すぐにドミニクはにっこり微笑んだ。


桜。