アネモネへ
















「あ、アネモネ」
「なぁに?」
「えっと、これを」
「うん」
「受け取って欲しい」
そう言って後ろ手に隠していた花束を見せる
突然のプレゼントに、どうしたの?とは聞かない
そこに意味は必要ないから
「ありがとう」
真っ赤な大きな花のアネモネ
「えっ、と・・」
ドミニクは自分の服をぎゅっと掴んで
ゆっくり深呼吸をしている
「バカねドミニクは、そんなに緊張することないじゃない」
「・・・ごめん」
そうやってすぐ謝るところも変わらず
「嬉しい」
そう微笑むと
今度は目を泳がせる
何をくれたって、嬉しいのに






「あ、アネモネ」
「うん」
ドミニクは少し俯き、深く息をする
「・・・君を愛す」
「・・・・ドミニク!?」
急な告白に声が上擦る
「あ、えっと、詳しくないから、調べたんだ」
「何を?」
「花言葉」
「アネモネの花言葉?」
「そう」
そう言ってドミニクはゆっくり頷く
知っている
それは絶望だって
何度も聞かされていたから
今度は私が俯く
「アネモネ」
花束をもつ手を上から包む
「赤いアネモネには、君を愛すっていう意味が、ある、って」
「そう、なの?」
「うん」
「・・私」
聞かされたこと無かった
知らなかった
「あの時は気づいていなくて、その、お詫びってわけじゃないんだ」
「・・・うん」
「あ、アネモネ泣かないで」
「ドミニク、私」
「あの時のアネモネを、君が大事にしてくれていて、良かった」
「・・大好きよ」
「あ、ありがとう」






あの時ぐしゃぐしゃにしてしまった花を
あの時出来なかったことを
たくさんを思い出しながら
あなたがくれたこの花を、
大事に大事に包む
そして、それをドミニクが優しく包む
「ありがとう」
ここに居てくれて