しかし、それは勿論大佐ではない。




「あ、の」


「もう、紛らわしいのよっ」

酷く落胆するアネモネを見るのは心が痛かった。


アネモネの頭を少し撫でた


「こちらの話だ。続けてくれ」


「あ、はい。明日の検査時刻が変更になりました。」
 


それから、また時間が過ぎる




「何か食べ物を持ってこようか?」
 

「・・いらない」




 
流石にアネモネの機嫌はもたなかった

あれから三時間近く経った。
 

もう夕方、夕方だ
 




「ジャム、苺がいい」




アネモネはベッドに座ってドアを見つめている 
 



「わかった」
 


私はその前にしゃがんみこんだ。 
 


「すぐ持ってくるね」
 



ガリバーは眠っていた。
 
 
「デューイ来ないのかな。」
 
「きっと大佐も忙しいんだよ」 
 

「でも、来るって言ったわ」

「うん」



苺ジャムの蓋を開けて渡す


「これ、いらない」

そう言って、スプーンを近くに放り投げた。
それを拾って、持ってきた皿の上に置く
そして、アネモネの隣に座った。

指で、ジャムを絡めそのまま口に放り込む

いつものように、味わっているふうには見えなかった。
味よりも、ただこの暇を潰すだけのようだ。

「髪に付くよ」
横髪を肩に掛けた

口の周りはジャムで真っ赤になっている


「ドミニクも食べる?」

「僕はいいよ、」

アネモネは、つまらないと言いたげな顔をした

また、ジャムに指を絡め
「あげる」
と、私の口のギリギリの所に指を持ってきた

「え、っと」

何も言わずに目で訴えられる
でも、その瞳は私を通り過ぎているような気がした。

口を開きジャムの付いたアネモネの指を銜えて、舐めた



「ん、」
甘い
ジャムをそのまま食べたのは、たぶん初めてだ。
ただ、ただ甘い


「おいしいでしょ?」

返事をする前に、アネモネは私の口の中にある爪を立てた

瞬間鈍い痛みが走った。

「・・っ」